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□ 短編小説 お題ネタ □

  『隣にいるだけ』

話を書く際、発想の元がこちらのお題からでしたので、念の為明記しておきます。
また、同じく題名にも拝借。

お題:隣にいるだけ
http://akome07.jakou.com/old.html


 
 もうじき1日も終わろうかとしている午後11時過ぎ。
玄関のドアを開ける音と共に、彼女の「ただいま」と言う声が聞こえて来る。
僕はいそいそと玄関へと向かい、おかえり、と出迎える。
その姿を見て、彼女は優しく微笑み僕をそっと抱きしめた。
「ごめんね、遅くなって。すぐご飯の用意するからね」
どこか疲れた顔付きで化粧もそのままに、彼女はキッチンへと向かうと、手にした上着とバッグだけをイスに掛け、そそくさと遅い夕食の支度を始めた。
僕はいつもの通り自分の指定席へとつくと、慣れた手付きで料理をする彼女の後姿を眺めながら待っていた。
どんなに帰宅が遅くなっても、彼女は夕食を外で済ませてくる事は無かった。
それは、忙しい毎日の中で料理をしているひと時こそが、彼女にとって掛け替えの無い憩いの時間でもあったからだ。
時折聞こえてくる鼻歌交じりの独り言が、それを物語っている。
やがて、運ばれて来た2つの食事をそれぞれの席の前に置き、彼女は僕を見た。
「じゃあ、私はお化粧落としてくるから、先に食べててね」
そう言い残して洗面所へと向かう彼女を見送ると、僕は一足先にご飯へとありつく事にした。
お腹が減っていたせいもあるのだろうが、やはり独りで食べるご飯より、誰かと一緒の方が美味しく感じるものだ。
「美味しい?」
黙々と食べ続ける僕を見て、戻って来た彼女は微笑ましげに呟いた。

しばらくして、食事を終えた彼女の「ごちそうさまでした」という声が、先に食べ終え水で喉を潤していた僕の耳に届いた。
再び台所に立ち、使った食器を片付け終えると、彼女は今度はソファーへと体を預けた。
「ふぅ……」
流石に連日の残業続きで疲れも溜まっているのだろう。彼女が珍しく深い溜息を付く。
ソファーに体を横たえた彼女は、いつしかそのまま眠ってしまったようだ。
そんな所で寝ると風邪を引くよ。僕は彼女の隣へと歩み寄ると、少々気は引けたものの、彼女を起こすべく体を揺する。
しかし、「う~ん」と唸りはしたものの、起きる気配は無い。
こうなれば最後の手段と、僕は彼女の小さく寝息を立てる顔に口を近づけると、長い舌で幾度と無く頬を舐め上げた。
「ん、何?――くすぐったいよ」
目を覚ました彼女は、目の前にいる僕の顔を見て取ると、その温かな腕の中へと体を抱き上げた。
「もぅ、この甘えんぼさんめ~」
何やら頭を撫でられ、どうも意図した事とは別の意味で捉えられた様子ではあるものの、無事目的は果たせたし、これはこれで悪い気分ではないので良しとしよう。
一頻り撫で回して満足したのか、彼女は僕を放しソファーから立ち上がった。
軽く伸びをした後、「さてと、明日の準備もあるし、そろそろお風呂入らないと」と言うが早いか、早速浴室へと向かい歩き出す。
途中、ふと何かを思い立ったようにこちらを振り返った彼女は、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「そうだ、たまには一緒に入る?」
お風呂。その響きにドキリとした僕は、遠慮しますと言わんばかりに数歩後ずさる。
その様が滑稽だったのが、クスリと笑顔を溢す彼女。
「でも、次の休みの日にでもまたちゃんと体を洗ってあげないとね。その時は逃がさないから、覚悟しておくように」
は、はい……そんな小声の返事が聞こえたのかどうか、彼女はちょこんと床に座る僕を横目に見ながら、浴室へと姿を消していった。
お風呂はちょっと苦手だ。
何故って、折角の毛並みがびしょ濡れになってしまうし、その水気を払おうと体を振ると彼女に叱られてしまうからだ。
お湯に浸かっている間は、確かに気持ちがいいのだけれど……

 彼女がお風呂から上がるのを待つ間に、僕は少し眠ってしまっていたらしい。
長い髪を乾かすドライヤーの音で目を覚ました僕は、寝ぼけた頭で彼女の足元へと擦り寄る。
それに気づいた彼女の手が、そっと背中に触れまた離される。
体とは実に正直なもので、たったそれだけの事で僕の尻尾は大きく左右に振られるのだ。
彼女がベッドで眠りに着くまでの僅かな間、こうして傍でじっと過ごす時間。
どんなに疲れている時でも、こうして傍に寄って来る僕を決して拒まないのは、彼女の優しさ故なのだろうか。
出来る事ならば、こんな僕でも隣にいる事で、少しでも彼女の安らぎになれているのなら本望なのだけど。
そんな思いから、つい、ペロっと彼女の足を一舐めしてしまった僕を怒るでもなく、彼女はじっとこちらを見つめた。
小首を傾げた僕をそっと抱き上げると、彼女はベッドルームへと歩き出した。
「今日はなんだが肌寒いし、一緒に寝よっか」
僕を先にベッドの上へと降ろし、彼女は寝る前の身支度を済ませると、1つ欠伸をしながら自分も同じようにベッドへと体を潜り込ませた。
「それじゃ、おやすみ」誰とも無く呟きながら彼女は目を閉じる。
やがて静かな寝息が立ち始めたのを聞きながら、僕もまた体を丸め、寄り添うように1日の終わりを迎えるのだった。
 
 
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Date:2011/12/22
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