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□ PSU小説 『草原の支配者』 □

第4章 後編

 
 ディ・ラガンの注意を2人から逸らすべく単身奮闘するTommyだったが、今だ倒れる気配の見えない強敵に体力の消耗を余儀無くされていた。
「くっ、そろそろ剣のPPも切れてきたか」
通常セイバーなどの接近戦に用いられる武器は余程の長時間使用でもしない限り蓄えられたフォトンポイント、通称PPが消耗する事は殆ど無い。
正規品の物であれば大抵の武器には出力を制御するリミッターが設けられている為である。
だがそれを一時的に解除し、使用する打撃武器のフォトン出力を上げる事によって通常の威力を大幅に上回る強力な攻撃、フォトンアーツと呼ばれる技を繰り出す事が可能となる。
しかし、その使用には武器のエネルギーその物でもあるPPの消費が伴う為、やがてそれを使い切ってしまえば武器のフォトン部分、つまりセイバーでいえば刀身に当たる部位の形状が保てなくなり使い物にならなくなってしまうのである。
そんな場合でも、携帯用に小型化された使い捨てタイプのフォトンチャージアイテムを使用すれば消費したPPを回復させる事が出来るが、今のTommyはそれすら使い切り正に満身創痍に近い状態だった。

流石の彼でも、残り少なくなった武器のPP残量を気にしつつディ・ラガンとの戦闘を続けるのに限界が見え始めた時だった。
「さっきのお返しだぜ!」
再び戦えるまでに体力を回復させたシェフが加勢に入ると同時に強烈なコンボを叩き込む。
その隙を突くように、今度はTommyのサポートへと回るカスミ。
「傷は大した事無いが武器のPPがほとんど空だ」
「私はまだ幾らか余裕あるから、これ使って」
カスミはナノトランサーから取り出したフォトンチャージをいくつかTommyに手渡す。
「助かる」
短く礼を返しつつ受け取ったそれを早速1つ使用し消耗した双剣のPPを回復させると、念の為残りを自身のナノトランサーへと収めた。
「支部に連絡は?」
「一応したけれど、すぐに援軍は望めそうも無いみたい……」
ディ・ラガンに遭遇し止む無く交戦状態に入った後、隙を見てその事をガーディアンズのパルム、ホルテス支部へと報告したカスミだったが、受付担当のキャスト、シーナの話によれば現在3人の居る付近には他のガーディアンズの姿は無く増援を送るにしても多少時間がかかるとの事だった。
「結局は俺達で対処しろって事か」
「どの道、こいつを何とかしないとここから無事に帰れそうも無いしなっ」
2人の会話が聞えたのか、ディ・ラガンの攻撃をかわしては反撃しつつシェフが言う。
「私達とディ・ラガン、どちらが倒れるのが早いか……出来れば、その前に援軍が到着してくれるのを願いたいところだけどね」

 再び3人での攻撃を再開して間もない頃、ブレスや突進などを繰り返していたディ・ラガンが再び上体を大きく起こした。
だが、今度はプレスを仕掛けて来るのではなくそのまま翼を大きく羽ばたかせたかと思うと、鳴き声と共に一気に空へと舞い上がった。
「このっ、飛びやがったか」
その様子に、シェフが悔しげに上を見上げる。
「このまま逃げるって事は……無いか、やっぱり」
同じように空へと飛んだディ・ラガンの姿を追っていたカスミの目が捉えたのは、遭遇時と同じく上空に停滞し火炎球を放たんとする動作だった。
次の瞬間、それまで3人がいた地面が爆炎と共に吹き飛ぶ。
が、既にその範囲から逃れていた彼等はすかさず反撃に転じる。
カスミの弓から矢継ぎ早に放たれる凝縮したフォトンの光の矢が次々とディ・ラガンの翼へと突き刺さっていく。
そこへ双剣から2丁のハンドガンへと持ち替えたTommyの銃撃が更に追い討ちをかける。
「こんなもんでも無いよりマシだろ」
シェフもまた牽制用に携帯しているハンドガンで2人を援護しつつ距離を詰めていく。
やがて弓のPPも尽きかけた頃、カスミは残るフォトンを全て最後の一撃に注ぎ込む。
「これでっ!」
狙い澄まし放たれた渾身の一矢が遂にディ・ラガンの片方の翼を貫き、その衝撃で度重なる攻撃によって弱っていた周辺の皮膚が裂け翼の中程に大穴となって穿たれる。
これには堪らず、ディ・ラガンは苦痛の呻き声を上げながら羽ばたく事すらままならない翼を不器用に動かしつつまるで激突するかのように地面へと降り立った。
しばらく痛みに耐えるように低く唸りながら身を強張らせていたかと思うと、今度は怒りの咆哮と共に激しく地を蹴り猛烈な突進攻撃を仕掛けてきた。
即座に回避行動に移ろうとするカスミ達の横を抜け、シェフが一歩前へ踊り出る。
「ちょっとシェフ、何をする気?」
その声に振り返った彼は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ再び正面へと向き直る。
「見せてやるぜ、ビーストの本領発揮した姿って奴を!」
高らかに叫んだ直後、シェフの体からまるで炎のような赤いオーラが発せられ始める。
「うおおおぉぉぉーー!!」
やがてそれが一層激しくなったかと思うと、次の瞬間そこに立っていたのは逆立つように生える真っ赤な髪に体のあちこちに描かれた白い紋様、そして全身を覆うように放たれる真っ赤なオーラに包まれた巨大な獣人だった。
それこそビースト最大の特徴でもある変身能力、ナノブラストを発動させたシェフの姿である。
ナノブラスト化により、ビーストは本来持ちえる身体能力を最大限まで引き出す事が可能となる。
しかしその反面、体にかかる負担も膨大なものとなり発動中は体力の消耗が激しい為、変身可能な時間は限られたものとなっていた。
また、並みのビーストでは一度の変身で著しく体力を消耗する為、その後動けなくなったり気を失う者も少なくない。
言わば諸刃の剣とも言える能力である。

「まさかあいつ、受け止めようってんじゃ」
彼の変身を見たTommyが思わずそう口にするのとほぼ同時に、シェフは雄叫びと共に真っ直ぐこちらへと突進してくるディ・ラガンへと駆け出した。
そして激しくぶつかり合う2体の獣。
凄まじい力と力の衝突する鈍くくぐもったような音が辺りに響き渡る。
ナノブラスト化によって通常の倍近い巨体になったとは言え、それでもディ・ラガンの半分以下という体格差もあり始めこそ押されていたシェフだったが、やがて突進の勢いを完全に削がれ両者の動きが止まった。
「いくら相手が手負いとはいえ、無茶し過ぎだろ……」
その様子を後方から見ていたTommyが半ば呆れたように呟く中、シェフは次第に形勢を逆転させていく。
捨て身の突進が通用しなかったと悟ったのか、ディ・ラガンは自分を押さえ付けている目の前の敵から逃れようと唯一自由になる首を振り噛み付きや至近距離のブレスを仕掛けようともがく。
だが完全に懐へと潜り込まれいる為、思うように攻撃が当たらない。
「いい加減、終わりにさせてもらうぜ」
シェフは一瞬ディ・ラガンの体から手を離し、次いで自分を狙ってくる首を左手だけで押さえ付けると、隙だらけになった頭部へと目掛け大きく右腕を振りかぶった。
「こいつで止めだっ!!」
次の瞬間、繰り出された強烈な一撃を受けディ・ラガンが悲鳴に似た叫びを上げる。
また横から殴り付けられた反動で首だけでなく体ごと大きく揺さぶれた巨体が2歩、3歩とよろけた後、辛うじて踏み止まったかに見えたその直後、そのまま崩れ落ちるように地面へと倒れ込んだ。
それと同時に限界を向かえたシェフのナノブラストの効果が切れ、再び見慣れた彼の姿へと戻っていく。
「ハァ、ハァ……」
力を使い果たしたのか、その場で立ち尽くしたまま肩で息をするシェフの下に他の2人も駆け寄った。
「何とか勝ったみたいだな」
一見しただけでは完全に倒したのか、はたまた気絶しているだけなのかまでは判別出来なかったが、地面に横たわったまま身動きを取る気配の無いディ・ラガンの姿にTommyはこの長かった戦闘に一応の決着が付いた事を確信する。
「まさか本当に私達だけでディ・ラガン討伐する羽目になるとはね」
ディ・ラガンとの激戦が終わり、カスミが皮肉交じりに呟く。
「……で、結局援軍とやらはどうなったんだ?」
疲れ切った顔でぼやきつつ顔を上げたシェフの目に、遠くから近付いてくる数人の人影が映る。
それはやがて3人の姿を見つけたかと思うと足早にこちらへと向かって来た。
「どうやら到着したらしいな」
「それじゃ、後は彼等に任せて私達は帰りましょうか」
手を上げ遅れて来た仲間達を出迎えるカスミの後を追い、Tommyとシェフも疲れた体を引きずるようにゆっくりと歩き出したのだった。


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Date:2008/04/05
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