駄文置場

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□ 短編小説 お題ネタ □

  『白い花を摘んだんだ 君のために 僕のために 僕らのために』

 
ベランダに咲いた白い小さな花を見て、娘が嬉しそうに振り返る。
「パパ~、今年も一杯咲いたよ~」
「そうだね、綺麗に咲いたね」
僕はその様子を少し離れた場所から見守るように眺めている……

「何してるの?」
ある日仕事から帰宅すると、ベランダの隅で何やら作業している君の後ろ姿が目に入った。
「ちょっと花を植えてたの」
作業を終え、こちらを振り返った彼女の手には確かに小さなスコップが握られていた。
「何を植えたの?」
そう尋ねる僕に、君はもったいぶるように答える。
「咲いてからのお楽しみっ」
「何だよ、それ」
それからしばらくして、そんなやり取りの事などすっかり忘れかけていた頃に、君は嬉しそうに僕をベランダへと呼んだ。
つられて行ってみると、そこには片隅に置かれたプランター一杯に白い小さな花が咲いていた。
「かすみ草かぁ」
「うん。私の大好きな花」
満足そうに花を眺める君の横顔に、僕も何だか嬉しくなったのを覚えている。

それから二年後、君は突然この世を去った。
僕と、二人の間に授かった生まれたばかりの赤ん坊を残して……
長時間に及ぶ分娩の末、君は無事子供を出産。しかしその後、母体の容態が急変。
そのまま、君は息を引き取った。

あれからもう五年、娘もすくすくと順調に育ち、最近は女の子らしさも少しは身に付いて来ただろうか。
男手一人で育てるのは決して楽ではないけれど、それでも僕は娘を愛しているし、娘も僕を父として慕ってくれている。
たまに娘にせがまれて君の事を話して聞かせると、嬉しそうな、でもどこか寂しそうな顔をするんだ。
たまらなくなって思わず抱きしめると、苦しそうに呻きながらもそっと笑って僕を見上げてくる。
君が居なくて寂しいのは、僕だけじゃないんだな……

君も今、遠い空の上から見ているのかな。
僕らの娘がベランダに咲いた白い小さな花を摘んだんだ。
一つは君のために。
もう一つは僕のために。
そして、寄り添うように三つ花をつけたそれは僕ら家族三人のために。
かすみ草の花言葉は『清い心』。
例え目立たなくてもそこに凛と咲き、その白い花弁を思わせるような清い心を持った子に育って欲しい。
そんな思いを込めて、娘に「かすみ」と名付けてみたんだ。
どうかな、結構悪くないだろう?
「来年もまた咲くかな?」
「あぁ。かすみが心を込めて一生懸命お世話をすれば、またきっと綺麗に咲くさ」
「もう、パパもお世話するの~」
そうやって頬を膨らませてむくれる所なんか、君にそっくりだとは思わないかい。
くしゃくしゃっと頭を撫でられ、乱れた髪をせっせと直す娘の姿に僕は、今は亡き君の面影を重ねずには居られなかった……
 
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Date:2008/04/04
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