駄文置場

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□ 短編小説 お題ネタ □

  私は貴方のまがいもの

 
 私は彼が仕事で忙しい間、部屋の管理を任されている。
今日もせっせと部屋のお掃除。
帰って来た時、綺麗になった部屋を見て一言誉めてくれるその言葉を聞きたいが為に。
本棚を整理しベッドのシーツを直し床に落ちたゴミを捨てる。
そして机の上に乱雑に重ねられた書類の束を整理しようと手を伸ばした時、ふとそこに置かれた1つの写真立てが目に入る。
そこには仲良さそうに寄り添う男性と少女の2人の姿が写っていた。
1人は明るい笑顔を浮かべながら少女の肩に手を置く今より少し若い彼。
そしてもう1人の少女は、そんな彼と良く似た笑顔を湛えながら彼の隣りに立っている。
少女の名はエリン。科学者をしている彼の娘だ。
白い肌に青い瞳、彼譲りの茶色がかった長い髪が風になびいている。
仲むつまじい親子の写真。
いつまでも見ていても作業がはかどらないので、目線を再び手元の書類群に戻す。
机の上もあらかた片付いたところで今日のお掃除は完了。
後は大人しく彼の帰りを待つだけだ。

部屋に置かれた大き目のソファーへと向かう途中、壁に立てかけられた鏡に私の姿が映る。
それは、さっき見た写真の少女と瓜二つの姿。
ただどれだけ姿形が似ていても、決定的に違うのは私の体が機械のパーツで出来ているという事。
そう、私は人間ではなく人工的に作り出された機械人形、マシナリー。
マシナリー技師でもあった彼は、数年前、不慮の事故で愛娘を失ってしまった。
その悲しみに耐え切れなかった彼は生前の娘そっくりの外見を持つ1体のマシナリーを作り出した。
そのマシナリーに姿だけでなく娘と同じ名前を付けて。
それが私『エリン』という存在。

あの写真を見る度に思う。
あんな風に明るく笑う彼を私は見た事が無い。
事故のショックから立ち直れていないだけなのか、それとも……
エリン、貴方は本当に彼に愛されていたのね。
所詮、私は貴方のまがいものでしかないのかもしれない。
そして彼が私に向ける愛情も、死んだ娘の姿を私に重ねているだけかもしれない。
でも、例えそうだとしても私は構わない。
それで彼の側に居られるのならば。
今彼の隣りに居るのは、娘エリンではなくこの私マリナシー、エリンなのだから……
「ただいま、エリン」
ドアが開く音と共に、帰って来た彼の声が聞こえて来る。
私はそれをにこやかな笑顔を浮かべながら迎えるのだった。
「お帰りなさい、お父さん」
 


PSUを題材に、お題で書いた短編。

・私は貴方のまがいもの
 とある男と少女の話。

お題元:http://akome07.jakou.com/
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Date:2008/09/02
Comment:2

Comment

*

まがいもの、っていう言葉が胸に突き刺さります。
代用品だとわかっていても自分の存在価値をそこに見出すしかない辛さ。
このお話からは、そんなマシーナリーの切なさ・いじらしさと、
無意味とわかっていても娘の代用品を作ってしまい
心を癒そうとした男性の哀しみが伝わってきました。

もし男性が愛娘の死をふっきる事が出来るとしたら
エリンという代用のPMを手放す時なのでしょうか?

どうあがいても失われた命の代わりになれる者はいないと思います。

うーん、短いながら凄く奥が深い作品ですね♪
2008/09/11 【クオレ】 URL #NHq3PhN. [編集]

* 生み出した者のエゴと生み出された者の想い

感想ありがとうございます^^
いやはや、そこまで色々と感じていただけるとは書いた甲斐もあったというものです。

お題からこの話を思いついた時は女性キャストの予定だったのですが、科学者の死んだ娘の変わりとしての存在としてはPMの方が扱いやすかった為、この設定になりました。
こちらの方が主従関係もはっきりしますしね。

彼にとって娘がかけがえの無い存在だったように、PMエリンにとっても主である彼が唯一無二の存在ですからね。
彼が娘の死を受け入れその悲しみを乗り越えられた時、果たしてエリンを手放すのか、それとも娘の代わりとしてではなく自分に仕える1体のPMとしての彼女の存在を受け入れるのか……
彼女の中にはそんな想いもあるのかも知れません。

>失われた命の代わりになれる者はいない
人に限った事ではありませんが、だからこそ命は尊いものと言えるのかも知れませんね。
2008/09/13 【カーレトン】 URL #-

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