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□ PSU小説 『流れゆく青に祈りを込めて』 □

  『流れゆく青に祈りを込めて』 -前編-

 
くまこの乱~運命の王女~

サイドストーリー
『流れゆく青に祈りを込めて』



 その日、城を始めとして街中が歓喜に湧き立っていた。
国王と王妃の間に生まれた待望の赤ん坊、それも双子の王女の誕生に国民の誰もが喜び、国全体が祝福ムードに包まれていた。
だがそんな平穏な時間が流れる中、この国に迫りつつある脅威とそれによって引き起こされる悲劇の事など、この時はまだ誰も気が付いてはいなかった……


 それは正に突然の出来事だった。
耳を劈くほどの爆発音と共に強烈な閃光が窓から差し込んだかと思った直後、激しい衝撃が城全体を揺らす。
「な、何事だ!」
思わず叫んだ王のもとへ、息も絶え絶えな一人の兵士が部屋の扉を開け駆け込んで来る。
「た、大変です! 隣国が、隣国の兵達が我が国に攻め込んでまいりました!」
「何だとっ!?」
先程の衝撃で割れてしまったガラス窓へと急いで駆け寄り、外の様子を眺めた王の目に飛び込んで来たのは、既に破られた城門をくぐり次々と侵入してくる見慣れぬ格好をした人間達の姿だった。
その中に模様の描かれた旗のような物を掲げ持つ者の存在を確認し、先程の兵の言葉が偽りではない事を確信する。
「これは、何と言う事だ……」
以前から隣国が密かに軍備を強化し、近々他国に侵略戦争を仕掛ける気なのではという噂は耳にしていた。
だが何の前触れも無くそれを行動に移すとは、王も流石に思ってはいなかったのである。
「しかも、よりによって今日という日に!」
悔しさに歯噛みする王へ、ベッドへ横たわったままの王妃が声を掛ける。
「あなた――いえ、我が王。起こってしまった事を憂えていても仕方がありません。今はそれにどう対処するかをまず考えなくては」
「そう、だな」
妻の言葉に多少冷静さを取り戻したのか、王は先程駆け込んで来た兵に現在の状況を尋ねる。
「城下街の方は逃げ惑う国民と無差別に攻撃を加える敵兵によってすでにパニック状態となっています。あちこちで怒号や悲鳴が聞こえ、悲惨な有様です……」
言いながら表情を暗く落とす様を見るだけでも容易に想像が付き、その場にいた誰もが言葉に詰まる。
「また現在、王国7騎士団を始めとする多くの兵達が王女誕生を祝うべく既に祝宴を上げていた事もあり、殆どの者がまともに応戦出来る状態には無い模様でして……」
この報告に、王は情けなく思いつつもどうしても彼らを責めきる事は出来なかった。
皆、それだけ娘達の誕生を喜び祝ってくれていた事の証なのだろうと、そう感じたからだ。
こうしている間も、窓の外からは絶えず兵達の刃を交える音や断末魔の叫び声が聞こえていた。
「そうだ。確か今7騎士団の1つ、緑茶王の率いる赤の団が国外へ出征しておったはず。これを緊急に呼び戻す事は出来ぬのか?」
「恐らく連絡はいっている頃かと思われるのですが、距離から考えて間に合うかどうか……」
遅れてやって来ていた別の仕官が答え終わろうかというそんな時、城への砲撃の衝撃か再び城内が鈍く揺れる。
「このままむざむざと城を落とされる訳にはいかん。とにかく城の出入り口の守りを固めさせるのだ!」
「はっ!」
王の指示を他の兵達にも伝えるべく再び伝令に走る彼の姿を見送り、王は愛する妻である王妃へと振り返った。
「子供達の様子はどうだ?」
「こんな騒がしい中でも2人共まだよく眠っています。ひょっとしたら、こういう所はあなたに似て案外度胸が座っているのかも知れませんね」
場違いとは感じながらも思わずフフッと笑みをこぼす王妃の横顔に、後ろ髪引かれる思いを抱きそうになる自分を堪え王はそれを吹っ切るように告げる。
「すまぬ。こうなってはワシも行かねばならん。出来ればもう少しそなた達の側に居てやりたかったが」
「いえ、あなたにも王としてのお勤めがおありでしょう。ましてやこんな国が一大事な時に、余り王がのんびりされていては兵達の士気にも関わります」
最後にもう一度だけ愛する妻と可愛い我が子達を目に焼き付けるように見渡した後、王は王妃の間を後にした。
「王女の誕生で皆の気が緩んでいた隙を突かれたのがまずかったか……」
先程までとは打って変わり、厳しい表情を浮かべながら足早に廊下を進む王。
「隣国の者はこの機を狙っていたのでしょうか?」
伴う従者の1人が控えめに発言したのに対し、王もまた振り返る事無く答える。
「そこまでは分からん。だが、どちらにせよこのままでは我が国が滅ぼされかねん事だけは事実だ……」
やがて王と数人の従者達はより詳しい戦況を把握する為、情報が集まっているだろう会議室へと消えて行った。

 王が部屋を立ち去った後、王妃はベッド横に控えていた自身の直属の配下でもある近衛騎士隊の隊長を呼びつけた。
「は、早急に王妃様と王女様達の避難の準備を致します」
「いえ、違うのです」
「と仰られますと……?」
てっきりその為に呼ばれたのだと思っていた彼は、片膝を着いたまま畏まりながら改めて王妃の言葉を待った。
「見ての通り、私はまだすぐには動けません。こんな状態で一緒に逃げたとしてもきっと足手まといになってしまうでしょう」
自らのベットと並べて置かれている王女達の揺り籠を見やり、その中で眠る我が子へとそっと手を伸ばしながら王妃は言葉を続ける。
「ですから、私に代わりこの子達を連れて一刻も早く城の外へ。いえ、争いの届かない安全な場所まで退避を……」
「ですが、それでは王妃様は……!?」
思わず顔を上げた彼と真っ直ぐにこちらを見据える王妃との目が合う。
そこに浮かんだ決意に満ちた表情から彼女の覚悟を悟った近衛騎士隊長は、これ以上の反論は無駄だと自分を納得させた。
「その任務、しかと承りました。王女様達の事は私共近衛騎士隊にお任せ下さい。必ずや敵の手から守り抜き、無事逃がすと誓いましょう」
近衛隊長は一旦部屋の外へと出ると、既にその場に揃い待機していた部下達へと手早く指示を言い渡す。
命を受けた近衛騎士達が守るべき者を連れ、廊下の奥へと消えて行く後ろ姿を見送ると、隊長は再び王妃の間へと戻った。
「たった今、双子の王女様を連れ部下の者達が城外への避難を開始しました。いずれも私に劣らぬ腕前の持ち主達。必ずや任務を果たしてくれると信じております」
そんな彼の報告を聞いても王妃の表情にいつもの柔らかな笑顔が戻る様子は無い。
「あなたは共に行かぬのですか?」
そう問い掛ける王妃に向い、彼は少し遠慮しつつも確信を持った声で答える。
「僭越ながら、私の務めはいついかなる時も王妃様のお側にお仕えし、万が一の際にはこの命に代えてでもその御身をお守りする事。ならば、あなた様が城に残られると仰るのであればそれに付き従うまで」
「忠義な事ですね」
彼の言葉が終わるのを待ち、王妃が発した一言に隊長は改めて畏まる。
「いえ……それが今私が果たすべき役目だと心得ておりますゆえ」
しばしの沈黙が流れ、城内外の慌しい様子が様々な音となって聞こえて来る中、王妃は呟くように言う。
「あなたのその忠義心、感謝します」
「そんな、勿体無きお言葉にございます……」
そんな王妃の言葉を胸に噛み締めながら、同時に彼は心の中で祈っていた。
部下でもある仲間達が無事任務を果たし、せめて2人の王女達だけでも逃げ延び生き長らえて欲しい、と。


 双子の王女を伴い王妃の間を後にした数名の騎士達は、慌しく動き回る城の警護兵や使用人達の間を縫うように城内を駆け抜けていた。
時折耳に届く兵士達の話し声からは、既に敵兵の一部が城内へと侵入したとの報告も聞こえて来る。
「く、予想以上に隣国の侵攻速度が早い……」
また窓から外の様子を窺っていた騎士ウォルトからも同様の報告が成され、彼等の表情にもいよいよ焦りの色が見え始めていた。
ほどなくして廊下を突き当たりへと差し掛かり、そこから一度城の東西に分かれる通路の真ん中で彼等は一旦足を止めた。
「さて、ここからどう進む?」
「既に敵が城内へと攻め込んでいる可能性を考えると、余りまとまって行動するのは返って敵の目に付くかもしれん」
「だが下手に戦力を分散させるもの危険じゃないか?」
各々意見を出し合い相談する最中、ふと抱えた揺り籠がモゾモゾと振るえるのに気付き、カーマインは腕の中を覗き込んだ。
すると何時の間にか目を覚ましていた赤ん坊の王女と目が合い、彼女が発したまだ言葉ともならない小さな声に反応するようにもう1人の王女もまた目を覚ましてしまう。
「よ、よしよ~し……」
慣れない手付きで必死にあやそうとするも、それが返って逆効果となってしまったのか王女達の表情がみるみる悲しげに曇っていく。
「私に任せて」
その様子を見るに見かねた女騎士アンナは、双子の王女にそれぞれ左右の手をかざし意識を集中させる。
「本当はこんな強引な方法、良くは無いのだけど……」
ポゥ、と手の先から仄かに発せられた光が2人を包み込んだかと思うと、今にも泣き出しそうだったその表情が見る間に和らぎ、やがては再び安らかな寝息を立てていた。
眠りを誘うテクニックが成功した事を確かめ、ホッと小さく安堵の息をつくアンナ。
「これでもうしばらくは眠っていてくれるはず。でも、かなり力を制限してかけてあるからそう長くは持たないわ。また目を覚ます前に何とかお2人を安全な場所までお連れしなければ」
本来、まだまだテクニックに対する耐性の弱い赤ん坊に対してこれを使用する事は大変危険を伴う行為ではあるものの、現状においては泣き声によって自分達の存在や位置が敵に知れてしまう事の方が危機的状況を招きかねない。
半ば女騎士の独断ではあったものの、それはこの場にいる誰もが理解している事でもありあえて彼女を責めようとする者はいなかった。
「やはりこれより先は別れて進もう。万が一2人揃っている所を襲われれば、それこそ逃げ切れる保証は無いかも知れん。最悪、そこで全滅だ」
「2手に別れて逃げればもし仮に片方が敵に発見されたとしても、もう片方は逃げ切れる可能性があると」
「そんな事態に陥らぬよう避けられればベストではあるがな……」
そして彼等は西へ進むカーマインとアンナ、東へと進むウォルトとミハエルの各2名ずつに別れ、それぞれ守るべき王女達を連れ進路を取るのだった。
誰も口にする事こそなかったが、皆心のどこかで共に生きての再会を願いながら……
 
 
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Date:2008/12/02
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