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□ PSU小説 『流れゆく青に祈りを込めて』 □

  『流れゆく青に祈りを込めて』 -後編-

 
 
 双子の姉を連れ敵の手から逃れるべく城内を奔走していた近衛騎士の1人カーマインは、廊下の先から聞こえて来る物音に思わず足を止めた。
どうやらこの先は既に敵の手が回っているらしく、数名の話し声や足音が徐々にこちらへと近付いてくる。
だが今戻れば、途中自分達を庇い負傷したアンナの犠牲を無駄にしかねない。
それは数分前の事だった。
度重なる敵の攻撃により脆くなっていた城の内壁の一部がついには崩落。
運悪くちょうどその下を通りかかっていたカーマインだったが、寸での所で身を呈し彼を助けたアンナの咄嗟の行動によって救われていた。
しかし、当のアンナは崩れた壁の破片によって傷付き、これ以上共に進むのは無理だと判断した彼女は王女をカーマインに任せ、1人その場に残る事を選んだのだった。
引き返す事も出来ず、かといって別のルートを探している余裕も無く、ここから城外まではあと僅か。
意を決した彼は、抱きかかえていた揺り籠を見つからぬ様近くの物陰へと隠すと、自らは剣を抜き廊下を静かに走った。
やがて声の主達が目前へと迫った所で、相手に悟られるよりも僅かに早く攻撃を仕掛けた彼は気合と共に剣を振り下ろし、まずは最も近くにいた1人を一刀の元に切り伏せた。
油断していたせいもあってか不意を突かれた形となった敵兵達は彼の登場に一瞬たじろぐも、すぐさま応戦すべく各々武器を構える。
「まさかこんな所にもいるとはな」
「ん? その格好……そうか、こいつ王族付きの近衛騎士だぜ!」
「という事は、こいつの首でも持って帰ればそれなりの報酬は期待出来るかもな」
口々に言いながらジリジリと包囲網を固める敵兵達の動きを眼で追いつつ、カーマインは自身を奮い立たせるように声を張り上げた。
「これより先へは一歩も通さん!」
まるでそれが合図になったかのように、どちらとも無く攻撃を仕掛ける双方。
持ち前の剣の腕を存分に発揮し次々と繰り出される相手の攻撃に対応する彼だったが、数の上で不利を強いられる状況に次第に追い詰められ始めていた。

「く、こんなところでやられる訳には……」
それでもまた新たに別の兵士を斬り倒し、他の1人にも手傷を負わせた時だった。
突然騎士の背後からあがる赤子の鳴き声に、その場にいた誰もがハッとなる。
「しまった、目を覚まして……!?」
カーマインの注意が一瞬そちらへと逸れた隙を突き、対峙していた敵兵の1人がすかさず剣を繰り出す。
「貰ったぁ!」
鋭く突き出された剣が真っ直ぐに彼の胴を捉え、深々と突き刺さった剣先が一気に背中へと貫通する。
「ガハッ……」
「戦闘の最中に敵から目を逸らすとは、基本がなってないぜ騎士さんよぉ」
不敵な笑みを浮かべ皮肉たっぷりに言い放つ敵の男の言葉に、彼はただ苦痛に呻きながら睨み返す事しか出来なかった。
ズズ、と鈍い音と共に剣を引き抜かれた傷口からは瞬く間に大量の血が流れ出し、体を伝い落ちる鮮血によってみるみる下半身が紅く染まっていく。
「ぐ……」
傷口を抑え、何とか堪えようとするも襲い来る激しい痛みに耐え切れず思わず片膝を着いてしまう。
そんな彼の横を通り過ぎ、先程から聞こえる声の主を突き止めんと辺りを探っていた敵兵の1人が少し先の物陰に隠された小さな揺り籠を発見し、他の仲間へと声をかける。
「おい、こんなところに赤ん坊がいるぜ」
揺り籠から乱雑に赤ん坊を取り上げ掲げてみせる男。
「そのガキだけか?」
「いや、他にはこんなもんがあるぜ」
そう言って次に取り上げたのは、王女と共に揺り籠に収められていたロイヤルブルーの生地に王国の紋章が刺繍された、彼女が王女である証とも言える儀礼服だった。
しかし手にする男はそれが何なのかまでは理解しておらず、ただヒラヒラと仲間に振って見せていた。
「……なるほど。こいつぁただのガキって訳じゃ無さそうだな」
だがそれを見て取った別の、どうやらリーダー格らしき男が赤子を持ち上げている男に忠告する。
「おい、そいつには手を出すなよ。生きて連れて帰りゃ、こいつなんかよりよっぽど金になるかも知れないぜ?」
“金になる”との言葉につられたのか、男はそれまでまるで摘み上げるようにして持ち上げていた赤ん坊を途端に両手でしっかりと抱きかかえ、ついでにその身を儀礼服で包み大事そうに仲間の下へと持ち運んでいく。
「で、この騎士様はどうするんだ?」
「もう興味も失せたしな、放っておけ。どの道、あの深手じゃ追っても来れんさ」
血溜まりの中、力尽き倒れたカーマインの目の前で赤ん坊の王女を連れ意気揚々とその場を去って行く敵兵達。
「ま、て……」
その後ろ姿を成す術無くただ見ているしかない自分の無力さに強い口惜しさを感じるも、出血が酷いせいでもはや体は言う事を聞いてくれず起き上がる事すら叶わない。
やがてそれさえままならない程に目はかすみ意識も徐々に薄れゆく中、最後に任務を果たせなかった己の不甲斐無さと、仲間や王妃達への申し訳無さを心底詫びながら、彼の意識は深い闇の淵へと落ちていった……


 一方、もう1人の王女である双子の妹を連れ城の脱出を試みていた近衛騎士ウォルトとミハエルは、城の地下に存在する使われる事が無くなって久しい古い通路を走っていた。
そこはかつて城の建造時に設けられ物資搬入路としても利用されていた場所であったが、城の完成間近に起こった崩落事故によって通路の一部が塞がれてしまって以来、立ち入りを禁止され現在では完全に放置されていた。
その為、滅多に近付くものもおらず城に仕える者でもここの存在を知っている人間は少なかった。
「国王や王妃様達は無事だろうか」
「分からん。だが、戻る事も出来無いのであればそう信じるしかない」
普段、優雅ながらもどこか親しさを感じさせる立ち居振る舞いと、絶えず優しい微笑を浮かべていた王妃。
しかし、隊長に命じられ持ち運べるサイズの揺り籠へとそれぞれ移された王女達を受け取った時の、王妃が浮かべていたあの愛娘である彼女達の身を案じつつも、同時に別れなければならない辛さに満ちた悲しく切ない表情。
王妃という立場ゆえの気丈さか涙こそ見せてはいなかったが、その心中は察するに余りある程のものだった。
まるで別人かと思わせるようなそんな姿が目に焼き付き、2人の騎士は課せられた任務の重さを改めて認識する。
「そうだな。今俺達が何よりも優先すべき事は、このまだ幼き王女様を無事逃がす事……」
「見えたぞ、あそこが出口だ」
地下通路の行き止まり、壁や天井が崩れたその上から僅かに外の光が差し込んでいる。
大人1人が通り抜けるのがせいぜいな大きさの穴を抜け、やがて彼等が辿り着いたのは、城の城壁から程近い草むらの中だった。
周囲の様子からそこが城壁の外であり、位置的には城の東側に当たる場所である事が見て取れる。
遠巻きに聞こえる戦いの音を避けるように、草むらをより深い茂みの方へと移動していく。
「城の外へ出たはいいが、これからどうする?」
「確かこの先に運河があったはず。まずはその流れに沿って下流へと進んだ先にある小さな農村へと身を潜めよう」
運河を目指し茂みの中を慎重にかつ迅速に進む2人。
先頭を行くウォルトの後を追いながら、ミハエルはふと抱えた揺り籠の中が気になり覗いてみると、まだテクニックの効果が続いているのか目を覚ましている様子は無かった。
スヤスヤと寝息を立てる愛くるしい王女の姿に一時の安らぎを感じながらも、同時にこの小さな命の灯火をこんな所で絶やしてはならないと、彼は疲れで鈍り始めた足に再び活を入れるのだった。

偶然か、はたまた策を巡らされていたのか、茂みを抜けた彼等の前に隣国の兵へと思わしき集団が現れる。
いや、正確にはそこに控えていた十数人の隣国の兵達のもとへ彼等が気付かぬ間に近付いてしまっていたと言うべきかも知れない。
思わず声を上げそうになるウォルトをミハエルが制する。
まだ多少距離があるせいか、向こうはまだこちらに気付いていないらしく一見特に目立った動きは無い。
じっと身を潜め何とかやり過ごそうとするも、どうやらその策は失敗に終わったようだった。
「ん? 茂みの中に誰かいるぞ」
「あれは、味方じゃない。王国の奴か!」
誰とも無く上がった声に反応し一斉に武器を取る兵達。
その声を背中越しに聞きながら、2人は即座に茂みの中を逃げ始めていた。
しかし、徐々に包囲網を広げ始める相手の動きに、ウォルトは隣を走るミハエルへと告げる。
「俺が囮になり奴らの気を引き付ける。その間にお前はこのまま運河を目指せ!」
「しかし、あの数相手に1人では……」
最もとも言えるミハエルの言葉にウォルトは返す。
例え2人で立ち向かったとしても結果は同じだろう、と。
「敵わずとも多少の時間稼ぎぐらいはしてみせるさ。さぁ迷っている暇は無い、早く行けっ!」
「……分かった。すまない、ウォルト!」
苦渋の表情でそう言い残し走り去っていくミハエルの背中を見送りながら、1人その場に残ったウォルトは愛用の双剣を手に再び地を蹴る。
自分達を探し、同じく茂みを進み来る敵兵達の姿へと向かって。

ウォルトの命を賭した囮によってある程度の時間は稼げたものの、しばらくは完全に振り切れなかった数名の敵兵が放った無数の銃弾が、ミハエルの肩や足を時折掠めていた。
それでも必死の思いで走り続けたお陰か、周囲に敵の気配を感じない程の距離までは逃げて来られた様子だった。
「ハァ、ハァ……」
息を切らし、傷ついた体を引きずるようになんとか川辺まで辿り着いたミハエルは、揺り籠をそっと地面へと降ろした。
中を覗き込んだ彼の顔をじっと見つめ返す無垢な瞳。
何時の間にか目を覚ましていたらしく、「あ~ぅ~」と小さく唸るように声を出している。
その赤く火照った頬に指先で優しく触れると、くすぐったいのかキャッキャと無邪気な笑みを浮かべながら、お返しとばかりに小さな両手を広げ一生懸命彼の方へと伸ばして来る。
「まだほんの小さな生まれて間もない赤ん坊だというのに、この何とも優しい笑顔にはもう既に王妃様の面影がおありになられる……」
ふと成長したこの子の姿を一目見てみたいという思いが彼の頭を過ぎった。
きっと王妃様に似て、さぞ美しい王女様に育つ事だろうと。
「フッ……」
こんな時に自分は一体何を考えているのだろう、と苦笑しながらも彼は呟く。
「誰かの為に心から祈った事など今まで無かったが、もし叶うのならば私の全てを捧げてでも願おう」
ミハエルは再び揺り籠を持ち上げると運河の浅瀬へと足を運び、そっと水の上へ降ろすようにして手を放した。
水面へと浮かんだそれは、緩やかな流れに任されるまま静かに運河を下り始める。
偶然にも赤子の体に被せるように乗せていたライトブルーの儀礼服が、まるで青き河の流れに溶け込むように周囲から彼女の存在を目立たなくしてくれていた。
これなら遠目には気付きにくく、すぐに発見されてしまう心配は無いかも知れない。
たった今自らが運河へと流し託した揺り籠を見送りながらミハエルは祈った。
「王女様、どうかご無事で。そしてあなたに星霊のご加護とお導きがあらん事を……」
その耳で、少しずつ確実に近付きつつある幾つもの足音を感じながら……


 隣国の侵略により故郷の王国が滅ぼされてから十数年後、生き別れとなった双子の王女はそれぞれ全く異なる環境のもとで育ちながらも、数奇な運命の巡り会いに導かれるかのように再会を果たす事となる。
その出生ゆえか互いに光と闇、相対する軍勢を率いる長同士となって……


――そして物語は続いてゆく。
  2人の王女とそれぞれに付き従う両軍との間に起こった激しい戦い、
  『くまこの乱』へと――― 
 
 
 
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Date:2008/12/02
Comment:2

Comment

*

楽しく拝読させていただきました♪
ミハエルさんの最後のセリフいいですね、PSUならではですよね(^-^)
2008/12/02 【ハルル】 URL #90LdKUd6 [編集]

* 感想ありがとうございます

まだまだ拙い文章ですが、楽しんでもらえたのなら何よりです^^

ミハエルのあのセリフは、ただ無事を祈るだけだと何か物足りないなと考えていた時に、ふと星霊の事を思い出しまして。
PSUの世界観なら神様等よりこっちの方が相応しいだろうと、こうなりました。

改めて読み直してみますと、これ以外に話の中でPSUの要素を感じる部分が少ないので良いアクセントにもなるかなと(笑
2008/12/04 【カーレトン】 URL #fCOsCZSE [編集]

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