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□ 短編小説 □

『視線の先』

 
 その日、珍しくまだ日の高い内に任務を終えた彼女は、気心の知れた仲間と共に、街角にある馴染みのカフェでくつろいでいた。
「どうした? ボーっとして」
不意に問いかけられた声に、何やら呆けたような様子で街行く人並みを眺めていた彼女は、彼へと振り返る。
「ん? あぁ、何だか幸せそうだなぁって思って」
そう呟きながら再び戻した彼女の視線の先には、連れ立って歩く1組の家族らしい3人の姿。
若い夫婦と2人の間に立ちそれぞれと手を繋いでいる子供。
何が楽しいのか、時折無邪気に笑う子供につられる様に、夫婦もまた優しげな笑みを浮かべている。
「ひょっとして羨ましいのか?」
「別に、そういう訳じゃ無いんだけどね……」
自嘲気味に小さく笑いながら口では否定してみるも、相変わらずの彼の鋭い指摘に彼女は思わず言葉を詰まらせる。
そんな彼女の様子を見かねてか、彼は静かに話し出す。
「まぁ、俺達はガーディアンズなんていう、任務の度に命張ってるような仕事をしちゃいるけどな。別に悪くは無いんじゃないか? ああいう、人並みの幸せってものを望んでみるのも」
まるで独り言でも呟くかのように言い終えた彼の横顔を、ちらりと見遣る彼女。
一見、いつもと変わらない涼しい表情をしていたかに見えたものの、一瞬緩めた口元が、単なるフォローのつもりだけで言ったのでは無いのだろうと、そう感じさせていた。
そして彼もまた、我ながら柄にも無い事を言ったものだ、と誤魔化すようにグイッと手にしたカップの中身を飲み干した。
「……そうね、そういう相手が見付かりでもしたら、考えるかもね」
先程とは違う意味でクスッと小さく笑みを溢した彼女は、すっかり飲むのを忘れ、冷め出してしまったティーカップの中身へとようやく口を付け始めた。
「ま、付き合う方は苦労するかも知れないがな」
「あら? それってどういう意味でなのかしら?」
一呼吸置きボソリと洩らした彼の言葉に、じろっと目だけを向けて返す彼女だったが、
「さぁな」
と、わざとらしく目線を逸らし席を立った彼によって、結局答えをはぐらかされてしまうのだった。
「じゃ、お先に」
そう言い残し、1人店を出て行く彼を見送りながら、彼女は先程自分が口にしたセリフを思い返す。
「そういう相手、か……」
次第に遠ざかっていく彼の背中を、じっと見つめながら呟く彼女の手の中では、僅かに残った紅茶の水面にぼんやりと映し出された、物憂げな彼女の表情が静かに揺れていた……
 
 
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Date:2009/03/26
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