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□ PSU小説 『黒と白』 □

 黒と白 4

 
それから数週間後、新たにニューデイズ北部に落下したSEEDコアにより、シコン諸島全域にも渡る広範囲に侵食が確認されたオウトク支部では、連日対応に追われる日々が続いていた。
侵食の影響を受け、凶暴化した大量の原生生物の鎮圧、及び侵食の浄化任務に当たるべく、多くのガーディアンズが現地へと派遣される中、琴魅と雪もまた仲間達と共にシコン諸島の一郭へと送り出されていた。
得意のツインダガーを駆使し、まるで舞い踊るかのように群がる敵へと攻撃を仕掛けて行く雪。
それに続く琴魅もまた巧みな剣捌きで敵を斬り倒し、遅れを取る様子はない。
「私達は侵食の浄化作業の方はやらなくていいの?」
まずは付近の敵を掃討し、更に次のブロックへと向かう間、雪は隣を歩く琴魅に尋ねる。
「それにはまた別の人員が割かれていますから。先行した部隊が、作業の障害となる敵を殲滅し終えた場所から、順次浄化に当たっているとの事です」
「なるほど。そっか、じゃあ私達も急がないとね」
「そうですね」
次々と出現する敵と化した原生生物達との戦闘を繰り返しながら、やがて担当区域、最後のブロックの敵も掃討し終えようかとしていた琴魅達の前に、まるで待ち伏せていたかの様に姿を現す1体の敵。
「あれはっ!?」
「ここで大物の登場って訳ね」
それまでの敵とは明らかに様相の異なるシルエットに、優にゴーモンの2倍以上はあろうかという巨大な体。
両腕の先から伸びる鋭い爪と、最も特徴的な、まるで別の生物が融合したかの様な胴と4本の足を持った下半身。
ニューデイズでも有数の大型生物、カマトウズが2人の行く手を阻むように立ちはだかり、こちらを見据えている。
「なら、こっちも奥の手で対抗してあげようじゃない」
負けじと一歩前へと踏み出した雪は、意識を集中させながらも徐々に感情を昂らせてゆく。
やがてそれが臨界点へと達した所で、彼女は内包する力を一気に解放させた。
気合の声と共に発せられた赤いオーラが彼女を包み込んだ次の瞬間、眩い光の中から現れたのは、ナノブラストを発動させ獣人化を果たした雪の姿だった。
男性型のそれとは違い、体は大型化するも細く引き締まった肉体にしなやかな手足。
指先からは鋭い爪が伸び、体のバネを活かした素早い攻撃を得意とするのが、女性型の特徴でもあった。
「いっくわよ~!」
それが合図とばかりにカマトウズへと一気に走り込んで行く雪に対し、カマトウズは自身の得意とするテクニックの1つバータでそれを迎え撃つ。
だが、それを上にジャンプする事でかわした雪は、そのまま距離を詰めるべく相手の懐へと飛び込んで行く。
「ていっ!」
眼前へと迫った彼女を払わんと爪を振るうカマトウズの攻撃を避け、側面へと回り込んだ雪は強烈な蹴りの一撃を見舞い、その巨体をよろつかせる。
更に2度3度と追撃を加え、遂にはカマトウズを地面へと薙ぎ倒した。
そんな両者の激しい攻防に、手を出す余地が無いと感じた琴魅は、ただじっとその行く末を見守っているしかなかった。
「これでも、手加減してるつもりは無いんだけどなぁ」
今しがた自分が蹴り倒した巨体の頑丈さに驚きながらも、既に起き上がろうとしているカマトウズへと再び攻撃を仕掛ける雪。
これに対抗するカマトウズは、再びテクニックを発動させようとしているようだった。
「またジャンプしてかわせば……」
「気をつけて雪さんっ、今度はギ・バータが来ます!」
咄嗟に叫んだ琴魅の言葉通り、先程とは違いカマトウズ自身を囲うように出来始める冷気の壁に気付いた雪ではあったが、既に勢いの付いてしまっていた体はすぐには止められそうも無い。
「上手く中心にさえ飛び込めればっ」
一か八か、思い切り地面を蹴りつけ高く飛び上がった雪は、そのまま落ちるに任せつつカマトウズの頭上から渾身の強打を叩き込んだ。
しかし、同時に下から出現した氷塊が彼女の体を捉え、雪もまた後方へと弾き飛ばされてしまう。
「ぅぐっ……」
受身も取れず、したたかに体を地面へと打ち付けてしまった雪は痛みに呻き声を洩らす。
その直後、ナノブラストの限界時間を向かえた彼女の体は、再び人の姿へと戻っていた。
一方のカマトウズは今の一撃が止めとなったのか、体を横たえたまま動く気配は無い様子だった。

「大丈夫ですか、雪さん?」
心配して駆け寄って来た琴魅に手を引かれながら起き上がった雪は、呼吸を整えつつ答える。
「な、何とかね……変身が切れる前だったお陰で、多少はダメージも和らいだみたい」
そう言って無理に笑ってみせる雪だったが、ナノブラ後の疲労感と戦闘でのダメージで、身体への負担は相当なものだった。
「でも、これで任務完了ですね」
戦闘の連続から開放され、ようやく一息付けそうだと安堵する琴魅。
だが、そんな彼女の背後に存在する何かに気付いた雪は途端に顔を強張らせ、忌々しげに呟いた。
「どうやら、そうもいかないみたいよ……」
様子を一変させた雪の只ならぬ表情に、視線の先を追った琴魅もまた驚きを隠せない。
「そんな……!?」
視界に映るその姿は、今しがた確かに雪が倒した筈のカマトウズそのもの。
だが、よく見るとその体には傷一つ見当たらないどころか、腕から伸びる爪の数が2本に増え、身体付きも一回り程大きくなっているかに見える。
「もう1体残っていたなんて……」
「しかもそれが、運の悪い事に強化型とはね……また厄介なのが出て来てくれたものね」
強化型。それはSEEDウィルスの影響を受け、凶暴化した原生生物の中で稀に見られる突然変異体を指す言葉だった。
肉体の大型化、牙や爪の本数が増える等変化は様々だが、より身体の特徴を誇張した姿の個体を俗に強化型と呼び、分類しているのである。
目撃例が少なく、またどの様な過程で生み出されるのかも定かでは無いが、どれも通常より強力な能力を有している事が報告されていた。
呆然とする2人を他所に、新たに出現した敵は既に攻撃態勢を整え、突進の構えを見せる。
「あの様子じゃ、やるしか無さそうねっ」
その直後、左右に飛び退いた2人の間を、カマトウズの巨体が猛烈な勢いで一気に駆け抜けて行く。
「あんなもの、まともに喰らったら只じゃ済みませんよ」
そう呟いた琴魅の言葉通り、勢いを落とす事無く突き当たりの木の根へと衝突して行ったカマトウズは平然としているものの、ぶつかった方の木の根は大きく削り取られ、痛々しい姿へと形を変えてしまっていた。
その後も幾度と無く狙いを変えては続けられる突進の応酬に対し、着かず離れずの距離を保ちつつ攻撃の隙を窺う2人だったが、それでも何とか多少の手傷を負わせるのが精一杯だった。
カマトウズの猛攻の前に攻めあぐねる状態が続く中、雪の動きが極端に鈍り始める。
「ハァ、ハァ……」
既に先程の戦闘での消耗が激しかった雪の体力は、もはや限界に近かった。
その事に気が付いた琴魅が彼女のフォローに向おうとするよりも僅かに早く、狙いを定めたカマトウズの巨体が雪へと迫る。
「雪さんっ!」
「まぁ、そう来るだろうとは思ったけどね……」
残った力を振り絞るように、眼前へと迫る敵へ攻撃を繰り出す雪。
同様に何とか寸でのところで追いついた琴魅もまた、飛び掛るようにしてカマトウズへと剣を振り下ろした。
しかし、それらを容易く弾いたカマトウズの反撃を受け、2人はそれそれ大きく弾き飛ばされてしまう。
「キャアッ!」
辛うじて受身を取った琴魅に対し、雪は木の根元へと横たわったまま気を失ってしまっている様子だった。
そんな彼女へ止めを刺さんと、ゆっくりと近づくカマトウズ。
「このままじゃ、雪さんが……」
腕を振り上げ、その爪が正に雪を捉えようとする様を目撃した瞬間、琴魅の中で何かが弾けた。
「させない!!」
弾き飛ばされた際の衝撃で痺れの残る手足を意ともせず、思い切り地を蹴り全力で駆け出す琴魅。
その体からはいつしか青いオーラが立ち上り、それはやがて彼女を覆い隠すほどに激しく発せられていた。
次の瞬間、カマトウズの側面へと体当たりを喰らわせ、巨体をよろめかせる紫の獣。
その反動で振り下ろした爪は狙いが反れ、雪の僅かに手前の地面へと突き刺さる。
間一髪、雪を助けるのに間に合った彼女は、少しでもこの場から遠ざけようとカマトウズの脇腹を蹴り上げるように横倒しにする。
「ぅ、う……ん……」
「良かった、気が付いたんですね。雪さん」
疲労とダメージで動けない体と、束の間気を失っていた事で朦朧とする意識の中、雪はその聞き慣れた声のする方向へと目を向ける。
「琴魅、なの……?」
そこに立っていたのは、よく見慣れた黒髪の彼女ではなく、体のあちこちを覆う紫色の毛に青いオーラを纏った獣人の姿。
「こんな所で貴女を死なせない。絶対に守ってみせます」
だが、その声は紛れも無く琴魅本人のものだった。
「でも、その姿、どうして」
何故、出来なくなっていた筈のナノブラスト化が急に発現出来たのか。
琴魅自身、無意識の内に変身していたせいもあり、もちろん動揺は大きかった。
が、今はそれよりもまず優先すべき事が彼女にはあった。
「雪さんはそこを動かないで下さい。あの敵は、私が何とかします」
言うが早いか、既に起き上がりつつあるカマトウズへと再び攻撃を仕掛ける琴魅。
「待って、琴魅。強化型相手に一人じゃ……」
そうは言いつつも、既にまともに立ち上がる事すら出来そうもない雪は、そのまま木の根に背を預けながら、ただじっと彼女の戦い振りを見守っているしかなかった。
それから何度目かのぶつかり合いの末、徐々に傷も増え追い込まれ始めたのはカマトウズの方だった。
しかし、琴魅もまた消耗が激しく、変身が解けるのも時間の問題となっていた。
そんな折、カマトウズお得意の猛突進をかわし切れず、琴魅は後方へと吹き飛ばされてしまう。
「琴魅っ!?」
思わず雪が声を上げる中、空中で体勢を整えた琴魅は、その反動を利用し背後の木へと跳び付くと、そこを足掛かりに更に高く舞い上がった。
真下には、自分の姿を見失い立ち止まるカマトウズ。
「これでぇっ!」
琴魅が仕掛けた上空からの会心の一撃に耐え切れず、断末魔の雄叫びを上げるカマトウズ。
それでもまだヨロヨロと辺りをよろめき歩く内、遂には水際から足を滑らせるように落ち、やがて水中へと沈んで行くのだった。

その様子を見届けていた雪の視界の隅で、既に変身が解け、元の姿で地面へとへたり込んでいる琴魅の姿があった。
「今度こそ終わった、のよね……」
彼女もまた力を使い果たし、肩で息を切らせている。
「あ、そうだ、雪さんは」
琴魅は重い体を引き摺るようにゆっくりと雪の元へと歩いていく。
「良かった、雪さんが無事で」
「それはお互い様。まったく、行き成りあんな無茶して」
一先ずは共に無事だった事に安堵の溜息を洩らしながらも、隣へと腰を下ろした琴魅を見る雪の顔からは心配げな表情が抜け切ってはいない様だった。
「私、ただ雪さんを助けたくて、必死で……」
雪の窮地を目の当たりにしたあの時、今まで味わった事が無い程の強烈な感情が湧き上がるのを琴魅は感じていた。
それは親友でもあり、また同時にパートナーでもある雪の命が奪われようとしている事への恐怖や、そんな自分にとって掛け替えの無い相手をただ一心に守りたいと言う強い想いが入り混じったような、一言では形容し難い物だったかも知れない。
だが、その感情が激しい衝動となって彼女の体を突き動かし、琴魅がいつしか押さえ込んでしまっていたナノブラスト化への心の箍さえをも外したのは確かだと思えた。
しかし、今度は何故力に呑まれず暴走せずに済んだのか。
その事も含め、自分自身戸惑いを隠せない琴魅はそう答えるのが精一杯だった。
「うん、分かってる。そのお陰でこうしてピンチを救われた訳だしね……ありがと、琴魅」
「いえ、そんな」
こんな場面でも謙遜してみせる琴魅の様子に、雪はすっかりいつもの琴魅に戻ったのだなと感じる一方、先程の様な凛々しい姿の彼女も悪くは無かったと思っている自分に思わず苦笑する。
「それにしても、2人ともボロボロだね」
「はい。しばらくは、まともに動けそうもありません……」
そう呟き、顔を見合わせた2人は互いの疲れ切った様に苦笑すると、やがて来る筈の後続の仲間達が到着するのを大人しく待つ事に決めたのだった。
 
 
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Date:2009/10/19
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