駄文置場

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□ 短編小説 □

 『放課後の秘密』

 
 暦は12月へと入り、やがて本格的な冬が訪れようとしていたある日の事。
日暮れの時刻も早まり、西の空をすっかりと染める夕焼けに照らされた放課後の校舎の一角で、彼女、クレアは今日も1人居残り黙々と作業していた。
学期末が近いと言う事もあり、生徒会長でもあった彼女の日々は、一層多忙なものとなっていた。
その原因の一つに、ここ最近患者数が増えつつある流行病にかかり、他の生徒会役員が半数近く病欠してしまっている事もあるのだが。
「ふぅ、とりあえず今日はここまでかしらね」
彼女がやっと1つの作業をし終える頃には、もう日はすっかりと暮れ、空は夜の闇に覆われていた。
部屋の戸締りをし、鍵を職員室へと返すべく持っていく途中、廊下で立ち止まり何やら話している様子の親友達、ミカとライラの姿を見つける。
「……じゃあ、続きはまた明日ね」
「うん、気をつけて帰りなよ」
クレアが声を掛けようと近づくのと、ミカがライラの下を去って行くのはほぼ同時だった。
「あぁクレア、今日も遅くまで大変だね」
「いえ。それより、お2人も居残りですか」
「ちょっとした用事があってね。ミカは今し方帰ったところで、私もこれからそうするところ」
2人は並んで廊下を進み、やがて鍵を返しに行ったクレアが戻って来るのを待つと、共に校舎を後にした。
「ねぇ、ライラ」
帰路へと着く道すがら、珍しく神妙な面持ちでクレアは隣を歩くライラへと声を掛けた。
「どうしたのさ」
「私、皆に何かしたかしら……」
「と、言うと?」
少し間を空け、クレアは言葉を続けた。
「ここ数日、何だか皆がよそよそしく感じる時があるのだけど。例えば、さっきのミカも……」
「それは考え過ぎだよ。あれはたまたまタイミングが合わなかっただけさ」
「そうなのかしら」
いつに無く浮かない表情の親友に、ライラは努めて明るく話しかける。
「それに、他の皆だってクレアに一切口を利かない訳でも無いでしょう? ほら、この所ずっと忙しそうにしてるから、疲れが溜まってそう感じるだけかも知れないよ」
「うん、そうね。ライラがそう言うなら、きっとそうなのね」
そう言って、自分へといつもの笑みを向けるクレアの表情に、ライラは僅かに胸が咎める思いがするのを感じずにはいられなかった。

それから数日後、クレアはようやく終わりの見え始めてきた生徒会の仕事を仕上げるべく、相変わらず放課後の生徒会室で机に向かっていた。
他に数人居残りで作業をしていた他の生徒達も、下級生と言う事もあり、暗くなる前にと言う彼女の気遣いを受け、一足先に帰宅していた。
結局、その日も日暮れの時刻をやや過ぎた頃までかかったものの、何とか終わりの目処が立ったところで、クレアもまたその日の作業を切り上げる事にした。
いつもの様に部屋の戸締りをし、職員室へと向かった彼女は、そこでクラスメートのノインと遭遇する。
「あら、ノインじゃない」
「あ、クレア。今から帰るの?」
「えぇ。貴方は?」
「私も、ようやく補習から開放されたところ。ねぇ良かったら、校門まで一緒に行かない?」
この提案に快く頷くと、クレアとノインは職員室を背に、廊下の少し先にあるエントランスへと歩みを進めて行く。
「ぁ、いけないっ」
靴も履き替え、後は校舎を出るだけと言う段階で不意に声を上げるノイン。
何事かと尋ねるクレアに向かい、ばつが悪そうに呟く彼女。
「ごめん、教室に忘れ物して来たみたい。急いで取って来るから、ここで待っててくれる?」
分かった、と薄暗い廊下の奥へと掛けて行くノインの後姿を見送りながら、クレアはエントランスで彼女の帰りを待った。
だが、もうかれこれ10分近く経とうと言うのに、一向に戻って来る気配が無い。
ここから彼女達の教室まで、歩いてもほんの数分と掛からない距離だ。
仮に教室の扉に鍵が掛けられ中へ入れなかったとしても、鍵を取りに職員室へ向かうのには必ずエントランス前の廊下を通るはずだった。
「どうしたのかしら……」
流石に心配になって来たクレアは、ノインの後を追い自分も教室へと向かって行った。
そして到着した見慣れた教室の前には誰もおらず、部屋の中の電気も消されたままだ。
念の為、確認するべく教室のドアへと掛けた手は、すんなりとそれを横にスライドさせる。
鍵が掛かっていない事を確かめると、クレアは一呼吸置き、真っ暗な教室の中へと足を踏み入れた。
「ノイン、居るの?」
彼女が、そう声を発した時だった。
それまでの静寂を切り裂くような連続したパンパンという軽い火薬の弾ける音と共に、一斉に上がる聞きなれた声達。
「「ハッピーバースデー、クレア!」」
続いて、誰かが点灯した教室の照明によって、室内が一気に照らし出される。
突然の事に心底驚き、目を丸くしたまま呆気に取られ立ち尽くしているクレアが事態を飲み込むには、すぐ側の照明スイッチの前に立つノイン、そして教室の黒板にデカデカと書かれた『Happy Birthday!』の文字、それと更に数十秒の時間が必要だった。
「そっか、今日は私の……じゃあ、これってもしかして」
よく見れば、教室の中央に集められた机の上には、蝋燭の立ったケーキと幾つかの料理や飲み物が並べられていた。
「そういう事。さぁさぁ、主役がいつまでもそんなところに立ってたら、パーティーが始められないよ」
ようやく理解したらしい親友の下に向かうと、ライラはクレアの背中を押すように用意された席へと彼女を座らせた。
その後ろをゆっくりと着いていったノインも交え、改めて乾杯の音頭をとろうと、ライラは仄かに泡立つ金色の液体が注がれたコップを手にする。
「さて、それじゃ改めて――ってこら、ミカ。また摘み食いしてっ」
「だって、お腹空いちゃったんだもん」
その様子を見ていた大柄の男子生徒、モーリスが呆れたように言う。
「そうだぞミカ(パク)、まずは乾杯してからだろうが(モグモグ)」
「ちょっと、モーリス。言ってる側からアンタも食べてるんじゃないよ」
「心外だな(ゴクン)、俺がそんな事する訳無いだろうが」
「じゃあ今飲み込んだものは何なのさ。それに、頬っぺたに食べカス付けながら言われても説得力無いから……」
ハァ、と思わず溜息を洩らすライラに、活発そうな少年スコットが楽しげに笑いながら話し掛ける。
「まぁまぁ、楽しく行こうよライラ。さ、仕切り直して乾杯乾杯」
そんな友人達のやりとりを眺めながら、クレアは満面の笑みを浮かべすっかり上機嫌だった。
そんなこんなで始まったクレアのバースデーパーティーは、そこが夜の教室とは思えない程に賑やかなものになっていった。
その様子を、窓辺で1人にこやかに眺めるノインの下へ、クレアが声を掛けにやって来る。
「さっきはごめんね、クレア。余計な心配させちゃって」
「ううん、気にしてないわ。きっとそういう予定だったのでしょう? 教室へ行った筈の貴女が戻って来ないのを心配して、私もここへ来るよう仕向ける為のお芝居ってところかしら」
うん、と頷き、思わぬ大役を無事果たした事と、クレアの言葉にほっと安堵の息を洩らす。
「パーティーの発案者も、貴女?」
「いいえ。これを企画して皆に協力を頼んだのは、ライラなの」
「ライラが?」
その頃、話題の張本人であるライラは、依然としてモーリスと漫才紛いの会話や、ケーキの取り分けなど周りの世話を焼いていた。
「このところ、生徒会の仕事も立て込んでたりで疲れているのか、貴女にいつもの元気が無い様に見えるって。だから、リラックスさせる意味も込めて、皆でクレアのサプライズパーティーしないかってね」
「そうだったのね。だから皆、それを知られまいと、どこか私によそよそしくして見えたのね」
あの時、その事を相談したライラには見事に言い包められたものだと、クレアは彼女の背中へチラッと感心と感謝の篭った目線を投げ掛けた。
「そんな風に皆から慕われて、こうして集まってくれる仲間も居て。何だか、貴女が少し羨ましい」
「え?」
「私は、皆ほど人付き合いが上手くないから……」
僅かに顔を俯かせ、どこか寂しげな雰囲気を漂わせるノインに、クレアは優しく語り掛ける。
「だけど、貴女もこうしてこの場に居てくれる。それだけで、私は十分に嬉しいのよ」
「クレア……」
「それにね、私にとって貴女も大切なお友達の1人なのよ、ノイン」
「……ありがとう。私もよ、クレア」
そして、互いに照れたように笑みを浮かべる2人へと、カメラ片手にやって来ていたスコットが慣れた手付きでそれを構え、手早くシャッターを切る。
「美少女2人の笑顔、いただきました」
「もう、おだてても何も出ないわよ」
「あらスコット、いつの間にカメラなんて持ち出していたの」
話している間も、時折カメラを構えては写真を撮りつつ、スコットは応える。
「折角だしね、良い記念になるかなぁと思って。特に頼まれてはいなかったけど、持って来たんだよ」
「そうなのね。貴方もありがとう、スコット」
「いえいえ、どういたしまして」
そんな事を話しながら、クレアはふと浮かんだ疑問を口にする。
「それにしても、ケーキや料理なんてどうやって学校に?」
「それに関しては、先生にも事情を話して了承済みだから問題無く持ち込めたかな。まぁ教室の使用については、流石に時間制限付だったけどね」
そして時計を見やる3人。
楽しい時間は過ぎるのもあっという間だ。終了時刻の午後7時半まで、もう残り僅かとなっていた。
そこへ、ライラの呼び掛ける声が届き、クレアとノインは再び教室の中央へと顔を向けた。
「お~い、そこのお2人さん。早くケーキを食べに来ないと、残りが全部ミカのお腹に消えちゃうよ~」
「あら、それは大変」
「それじゃあ急がないといけませんね。さぁ、皆のところに戻りましょ、ノイン、スコット」
悪戯っぽく言い、一足先にライラ達の元へと戻るクレアを追うスコット。
そしてノインもまた、そんな2人に遅れまいと友の待つ輪の中へと歩き出したのだった……



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いつもお世話になっている方の誕生日と言う事で、日頃の感謝とお祝いする気持ちを込めて、こんな話を書いてみました。
登場人物に関して、勝手ながらモチーフにさせていただいた方々、どうもすみません(汗
 
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Date:2009/12/01
Comment:2

Comment

*

サプライズパーティー・・・、素敵なお話ですね^^

各キャラクターのモデル、私にはわかってしまいましたよ?(^-^)

ありがとうございました♪
2009/12/03 【ハルル】 URL #90LdKUd6 [編集]

*

どんなものを書こうかと悩みましたが、下手に凝るよりもここは一つ分かり易いものにしようと言う事で、こんな感じの話に仕上げてみました。

もし喜んでいただけたのなら、何よりです。
2009/12/04 【カーレトン】 URL #-

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